「タンチョウ」の基礎知識【生態・体格・見た目・保全状況など】

生き物

北海道を代表する野生動物としては、ヒグマ・キタキツネ・エゾシカなど様々な存在が見られますが、鳥類の中で見た場合「タンチョウ」の存在を忘れることは出来ません。

タンチョウは、かつては日本を代表する鳥として文化的なモチーフとして用いられるなど身近な存在でしたが、多くの地域で事実上絶滅し、現在では北海道の一部地域のみが生息地域となっています。

こちらでは、タンチョウについての基本的な知識について、その身体的な特徴や各種生態、人間との関係など様々な角度から解説していきます。

タンチョウの「名前・種類・生息地域」

種類 動物界(Animalia)
脊索動物門(Chordata)
亜門 脊椎動物亜門(Vertebrata)
鳥綱(Aves)
ツル目(Gruiformes)
ツル科(Gruidae)
ツル属(Grus)
タンチョウ(G. japonensis)
学名Grus japonensis
英名Japanese crane
Manchurian crane
Red-crowned crane
名前の由来頭頂部が赤いことから丹(タン・赤い色の意味を持つ)に由来
生息地域国内北海道の主に道東(釧路)一部は道東以外での越冬も
海外:ロシア極東地域・朝鮮半島北部・中国東北部 など

タンチョウは、鳥綱ツル目ツル科ツル属に含まれる鳥類です。名前については頭頂部が赤色をしていることから、赤色の意味を持つ語「丹(タン)」に由来する名前となっています。

生息地域は極東アジア一帯のうち寒冷な地域となっており、日本国内では北海道のみ、基本的には道東を中心とした地域が生息地となっています。繁殖については、北海道・その他極東アジアで群が分かれており、完全に混じり合って生息している訳ではありません。

タンチョウの分布は江戸・明治時代頃までは比較的広く分布していたものが、乱獲など環境の変化もあり急減し、一時は「絶滅した」と推定されていた時代もあります。1924年に釧路湿原一帯で「再発見」された以降は、その周辺地域に大半が分布する状況となっていましたが、近年は保護活動などの成果もあってか生息数の増加、生息地の拡大傾向が見られます。

近年では十勝平野・宗谷地域(サロベツ原野)・オホーツク地域のみならず、苫小牧市のウトナイ湖周辺、長沼町の「舞鶴遊水地」でも確認されるなど、道東からその生息の範囲を広げつつあり、将来的には道南・東北・本州各地などに生息地が「復活」していくことが期待されます。

なお、札幌市内での生息は近年も含め確認されていません。但し、円山動物園の総合水鳥舎で飼育がなされているため、ご覧頂くことは可能です。

タンチョウの「体格(大きさ)」

体長1.4m程度
翼の長さ65cm程度
翼を開いた場合の長さ2.4m程度
体重6~12kg程度
その他くちばし(嘴)の長さ:16cm〜17cm程度
しっぽ(尾)の長さ:24cm~28cm程度
足の下(ふ蹠)の長さ:27cm~31cm程度

タンチョウは、その姿はかなり大きいことが特徴の鳥類であり、日本で一般に「ツル」と呼ばれる存在、また日本国内で生息する鳥類全体の中でも「最大級」の存在となっています。

体長は概ね1.4m程度と人間の背丈よりは短いものの、翼を開いた場合の長さは2.4m程度に達し、かなりの存在感を放ちます。

全体的な大きさ・体重はオスがメスよりもやや大きい傾向があるとされますが、外観から分かるほどではありません。

タンチョウの「見た目(色)・身体的特徴」

基本的に「白色」
目の周り~喉の周り・翼の先端・足は「黒色」
頭部の一部は「赤色」
くちばし(嘴)は「黄褐色」
身体的特徴・頭頂部の赤い部分は毛がなく「皮膚」が露出している(細かいイボ状)、赤色は血液の色が透けた状態
・興奮したり怒ったりする際に、上記の赤いイボ状の皮膚が飛び出し、より鮮やかな色となる

タンチョウは、全体的には白が目立ちますが、顔の周囲や足・翼の一部は黒色、頭頂部は赤色、くちばし部分はやや黄みがかった色と、比較的コントラストの効いた「目立った色彩」が特徴となっています。

とりわけ頭頂部の赤色については、毛の色と勘違いされている方も多いですが、これは「血液」の色が透けて見えているような状態で、体の他の部分とは大きく性質が異なります。この部分は「毛」がなく端的に言えば「はげた」状態で「皮膚」が露出しており、皮膚は細かいイボ状の突起となっています。

なお、赤ちゃんのタンチョウには頭頂部の毛が存在しますが、生後1年程度で抜け始め、2年も経過する頃にはこの「赤色」の外観へと変化することが基本です。

タンチョウの「行動・生活・能力(生態)」

活動時間帯昼行性(夜間は概ね休息の時間)
生息地湿原・湖沼・川沿いなど水辺の地域
行動範囲・形態鳥のため冬眠はしない
・越冬地と繁殖地が異なる場合あり(渡り鳥)
・広い範囲を動く(道内でも150km~300km程度を移動の場合あり)
・より寒冷な極東アジア各地の個体は渡り鳥となるため、移動距離が極めて長い
・北海道内の個体は道内のため「渡り鳥」ではない(「留鳥」・「漂鳥」と呼ばれる)
冬場は群れで生息する一方、夏場などは単独行動の場合もあり
広大な「なわばり」を持つ
巣の場所・主に周囲からの水が入る低層湿原一帯に「枯れ草」で営巣を行う
・巣の大きさは1.5m程度
・巣は基本的に繁殖期に利用
習性・能力など・オスとメスが声を合わせて鳴く「鳴き合い」が見られる
・オスの鳴き声は「コーッ」、メスは「カッカ」と聞こえる
天敵キタキツネ・ミンク・野犬など

タンチョウは、一般に渡り鳥というイメージが持たれていますが、北海道内で生息する個体群は、必ずしも渡り鳥と言われるものではありません。

道内のタンチョウは大半が道内で繁殖・越冬の両方を行うもので、仮に道内の長距離を移動する場合でも、日本海などを越える訳ではないため、「留鳥(同じ地域で生息)」・「漂鳥(渡り鳥ほどではない移動をする場合)」と呼ばれる区分に当てはまります。

一方で、ロシアなどのより寒冷な地域のタンチョウは、冬をしのぐために朝鮮半島や中国東北部までかなりの長距離を移動するため、こちらはいわゆる「渡り鳥」にあたります。

生態は昼間に動くことが基本で、単独行動をする場合もあれば、冬場など群れで行動する場合もあります。各個体は数平方キロに及ぶ広大な「なわばり」を持っており、個体同士で争いが生じることがあります。

巣については、常時利用しているものとは言えず、繁殖期に卵を産む場所として枯れ葉などを用いて作られます。

特徴的な習性としては、オスとメスのつがいがお互いに鳴き声を上げる「鳴き合い」が見られ、オスとメスの鳴き声に違いが見られることから、外観ではなく鳴き声でオス・メスの違いを判断することが可能です。

タンチョウの「食事」

食性雑食性
主な食べるもの様々なものを食べることが特徴
動物など:各種昆虫類(幼虫)、各種貝類、各種魚類(ドジョウ・コイ・ヤチウグイ・ヌマガレイなど)、カエル類、エビ類、カニ類、ミミズ、カタツムリ、鳥のヒナ、ネズミなどの小動物
植物:葉(セリなど)、芽(フキ・アシなど)、茎、根、果実(ミズナラなど)

タンチョウは、その「食事」内容は「雑食性」の言葉通り多岐に渡ります。

昆虫や魚、海といった水辺で手に入るものに加え、時には鳥のヒナや小動物なども、自らの体格より大幅に小さいために採食することがあります。

一方で、肉食という訳ではなく、植物の葉や芽・茎などの草本類、秋には果実なども食べることもあり、その時期・環境で食べやすいものを柔軟に食べる動物と言えるでしょう。

なお、冬眠をしないタンチョウは、冬場でも食べ物をある程度は食べる必要がありますが、北海道の厳しい自然環境では満足に食べ物を入手できない場合もあります。そのため、人為的に「給餌場」が設置されており、そちらで食べ物をある程度賄う状況も見られます。

タンチョウの「一生」

寿命成長した個体の場合で平均20~30年程度とされる
繁殖のプロセス産卵:2月下旬~4月下旬1~2個のみ卵を産む
雌雄交代で抱卵、抱卵期間(孵化まで)は約1か月少々
誕生後・生まれた後数日で巣から離れ、その後は親について歩き生活
・概ね誕生後100日程度で飛翔(空を飛ぶ)可能となる
・1年程度で独立して動くようになる

タンチョウは、その寿命は成長した個体の場合で20~30年程度と考えられています。但し、実際には赤ちゃんや独立して動くようになる前段階で死亡する個体が大変多いことから、平均寿命はこれより大幅に短いと推定されます。「ツル=長寿」のイメージが強いですが、厳しい自然環境もあり、決して多くが長生きする訳ではありません。

繁殖については、この時のみ用いられる「巣穴」で春のシーズンに産卵が行われ、概ね1か月少々で卵が孵化し赤ちゃんタンチョウが誕生します。誕生後はすぐに巣穴から離れ、100日程度で空を飛ぶことが可能になり、1年後には独立して単独で行動するようになります。

なお、繁殖は日本国内で見られる「ツル」の中では唯一タンチョウが国内での繁殖を行う種となっています。他の種は越冬地として日本へ「渡り鳥」としてやってきますが、タンチョウは北海道内で1年を過ごすため、繁殖は国内で行われる形になっています。

タンチョウの保全・タンチョウと人間

各種指定特別天然記念物
国内希少野生動植物種
環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類(VU)

タンチョウは、古い時代に目を向けると、日本国内では本州でも生息していた記録が残っているなど、現在と比べ一般的な存在であった歴史があります。

「ツル」は古代から各種の道具や装飾品などのモチーフとして最も多く利用され、花鳥画の題材としても美しいタンチョウの姿は好んで描かれてきました。

現在でも、例えば日本航空の赤色のブランドマークは、タンチョウが優雅に舞う姿を表現したものとなっているほか、1000円札の裏側にもタンチョウのモチーフが見られます。

一方で、生息地は特に明治時代以降極端に縮小し、一時期は「絶滅」したとみなされる程個体数が減少する状況に陥りました。この減少は乱獲や北海道開拓による湿原の環境変化などが要因と考えられ、1924年に絶滅したとされていたタンチョウが「再発見」されてからも、長らく釧路湿原周辺の一部地域のみに生息し、個体数も数十羽程度の時代が続きました。

そのような希少なタンチョウは、その「保護・保全」は国内の野生動物の中でも特に早く推し進められた存在とも言えます。1892年には日本国内でツル類の狩猟が禁じられ、「再発見」の後も生息地が禁猟区に指定されるなど、これ以上の乱獲を防ぐための措置は早い時期から行われました。また、1935年には天然記念物指定を、1952年には「釧路のタンチョウ」として特別天然記念物指定を受けるなど、保全に対する機運を高める動きが広がりました。

生息数については、昭和の時代以降「エサ」が激減する冬場に人為的にエサを与える「給餌場」などが設けられるようになり、特に1970年代以降はその給餌の規模が大きくなったことから、生息数は明らかに増加基調になりました。近年では過去の数十羽とは比べ物にならない「1,500羽」を超える規模の生息数に回復するなど、かつてのような「直ちに絶滅が危ぶまれる状況」からは脱しつつあります。

一方で、冬場にエサを与えて増加させる施策は、必ずしも自然なものではなく、事実上タンチョウの命を「人間頼み」の状況で半飼育するものであるのも事実です。生息地域の拡大や感染症の予防といった観点から、給餌の量などについて試行錯誤が行われ、現在も保全への取り組みが進められています。

まとめ

タンチョウは「ツル」の一種であり、現在は極東アジアの一部と北海道の主に道東(釧路湿原周辺)で生息しています。生息地は湿地など水辺に限られており、本州などには生息していませんが、近年道内で生息地が拡大する傾向が見られます。

体長は日本で見られる「ツル」類の中では最も大きく1.4m程度、翼を広げると2.4m程度と大きな体を持ちます。色は白色を基本に足など一部が黒色で、特徴的なものとしては、頭頂部のみ皮膚が露出して赤色になっている点が挙げられます。

生態としては、道内に生息する個体はいわゆる「渡り鳥」ではなく道内に留まる一方、ロシアの個体は遠距離を飛来するなど、地域により差が見られます。
行動は単独・群れの両方が見られ、なわばりが広いことも特徴です。また、食事は雑食性でその環境に応じて様々なものを食べています。

ツルは長寿と言われますが、長く生きる個体では20~30年程度である一方、実際には赤ちゃんの段階で多くが亡くなるため、決して長寿の動物とは言い切れません。
繁殖は「巣」で産卵する形で春に行われ、誕生後は100日程度で飛翔1年程度で独立する形で成長していきます。

タンチョウは長らく北海道のみならず日本文化の中で特に象徴的な存在として扱われる動物でしたが、明治以降乱獲・環境の変化で急減し、一時は絶滅したとみなされるほどの状況に陥りました。
一方で、戦後は人為的にエサを与える「給餌場」の設置・拡大により生息数が増加し、一時のような絶滅寸前の状況は脱しています。