北海道内を走るJR線(JR北海道・北海道旅客鉄道株式会社)は、厳しい経営環境もあって「運賃」は他のJR各社と比べ割高なことで知られます。
一方で、「特急」を利用する際の特急料金で見た場合、「高さ」が目立つ運賃とは取り巻く状況が少し異なる形になっています。
こちらでは、JR北海道の「特急料金」の基本について、利用上の特徴や料金表など、知っておきたい「基礎知識」を詳しく解説していきたいと思います。
特急料金のポイント

まず、JR北海道の特急料金の制度的な基本を解説する前に、JR北海道の特急料金制度の重要なポイントをおさえておきましょう。
他社よりむしろ安い場合あり
JR北海道の「特急料金」は、常に他社より高い「運賃」とは異なり、逆に「安い」料金設定となっている場合があります。
JRの特急料金制度には、指定席の料金で見た場合基本となる「A特急料金」とやや安い「B特急料金」があり、このうちJR北海道は「A特急料金」のみの設定ですが、150kmより短い区間の場合、他社より料金が安く設定されています。
「特急料金だけ」で比較すれば、A特急料金が適用されるJR四国の全区間、JR西日本の北陸地域、JR東日本の新潟・仙台周辺の一部特急よりも安くなる場合があるのです。
指定席 | JR他社 | JR北海道 |
---|---|---|
25kmまで | 1,290円 | 850円 |
50kmまで | 1,290円 | 1,160円 |
100kmまで | 1,730円 | 1,680円 |
150kmまで | 2,390円 | 2,360円 |
自由席 | JR他社 | JR北海道 |
---|---|---|
25kmまで | 760円 | 320円 |
50kmまで | 760円 | 630円 |
100kmまで | 1,200円 | 1,150円 |
150kmまで | 1,860円 | 1,830円 |
運賃を合計すると結局割高にはなりますが、経営難の「JR北海道」であるにも関わらず「特急料金は安い」という点は、JR各社の複雑な料金システムを特徴づける一つの要素となっていると言えるでしょう。
短距離で使いやすい
他社より安い場合があるJR北海道の特急料金は、特に「短距離(短い区間)」ではとてもお得です。
JR北海道の「自由席特急料金」のうち「25kmまでの区間」はわずか320円。これは、JR九州の310円とほぼ同額で、JR線の通常の特急料金区分としては最も安い部類に入ります。
具体的な区間で見てみると、一例としては苫小牧~白老、岩見沢~美唄、滝川~深川といった区間であれば、運賃にこの320円をプラスするだけで、特急がご利用頂けます。
苫小牧~白老 | 料金 運賃540円+自由席特急料金320円=合計860円 所要時間 15分 距離 21.6km |
岩見沢~美唄 | 料金 運賃440円+自由席特急料金320円=合計770円 所要時間 1分 距離 16.8km |
滝川~深川 | 料金 運賃540円+自由席特急料金320円=合計860円 所要時間 13分 距離 23.1km |
札幌駅からの場合、25km以内の特急停車駅は新札幌しかないため、使うメリットは薄いとも言えますが、地域によっては普通列車よりも特急の本数が圧倒的に多い区間もあるため、そういった地域の移動では大きなメリットのある料金設定と言えるでしょう。
「お得なきっぷ」利用が前提のケースが多い

JR北海道線内で特急に乗車する場合、比較的短い区間も、かなりの長距離も含め「お得なきっぷ」が充実しており、事実上そちらの利用が前提となっている区間も目立ちます。
そのため、実のところ「特急料金」自体は必ずしも払わないケースも多くなります。例えば、以下のように主要な区間で見てみると、お得なきっぷが通常料金よりも圧倒的に割安であることが分かります。
区間 | お得なきっぷと通常料金の比較 |
---|---|
札幌~旭川 | お得なきっぷ 最安2,860円~ 通常 最安4,690円~ |
札幌~函館 | お得なきっぷ 最安5,660円~ 通常 最安8,910円~ |
札幌~帯広 | お得なきっぷ 最安3,490円~ 通常 最安7,260円~ |
札幌~釧路 | お得なきっぷ 最安4,990円~ 通常 最安9,460円~ |
札幌~稚内 | お得なきっぷ 最安6,655円~ 通常 最安10,560円~ |
お得なきっぷは、座席数・利用列車限定の「えきねっとトクだ値」などが最も安いですが、1年を通して条件なしで利用出来る「乗車券往復割引きっぷ」・「自由席往復割引きっぷ(Sきっぷ)」・「指定席往復割引きっぷ(Rきっぷ)」も多くの区間で利用できるため、大半の区間で「どのような条件」でも「お得なきっぷ」の利用が安くなり、そちらの購入を前提とした移動がおすすめとなります。
すなわち、「運賃(乗車券)+特急料金(特急券)」をセットで買うという、ごく一般的な「特急の乗り方」は、少なくともJR北海道線内ではごく一部を除き「不要(おすすめできない)」ということになります。
JR北海道の特急料金表・算出(利用)ルール

JR北海道の特急料金の料金表、料金制度に関するごく基本的な知識については、以下の通りとなります。
料金表
JR北海道の特急料金 | 指定席特急料金 | 自由席特急料金 | 特急+グリーン料金 |
---|---|---|---|
25kmまで | 850円 | 320円 | 1,620円 |
50kmまで | 1,160円 | 630円 | 1,930円 |
100kmまで | 1,680円 | 1,150円 | 2,450円 |
150kmまで | 2,360円 | 1,830円 | 4,630円 |
200kmまで | 2,730円 | 2,200円 | 5,000円 |
300kmまで | 2,950円 | 2,420円 | 6,610円 |
400kmまで | 3,170円 | 2,640円 | 6,830円 |
401km以上 | 3,490円 | 2,960円 | 8,360円 |
601km以上 | 3,830円 | 3,300円 | 8,900円 |
JR北海道線内の特急料金(在来線)表は上記の通りです。短距離では割安感がある料金設定であり、比較的使いやすくなっています。
特急料金の基本中の基本
JR線の特急料金と呼ばれているものは、JRのどの会社であっても一般に「指定席」と「自由席」の特急料金を指します。
料金表は、JR各社で見た場合通常料金の「A特急料金」と割安な「B特急料金」の設定があります。先述の通り、JR北海道は「A特急料金」の設定のみながら、JR東日本など他社と比べて150kmまでの区間の料金が安くなっており、短距離は割安感が見られます。
なお、通常最もグレードの高い座席である「グリーン車」については、グリーン料金は特急料金とは異なるもので、計算する上では「自由席特急料金」の金額+「グリーン料金」の合計が、グリーン車の座席料金となります。
新幹線の特急料金については、在来線の特急料金とは金額の設定に違いがあるため、同じ料金表ではありません。但し、指定席・自由席・グリーン席(例外としてグラングラス)という座席の区分、自由席料金・グリーン料金の求め方の基本といった「ルール」に大きな違いはありません。
座席の取り扱い

JR北海道に限らず、JR全社に共通する点ですが、特急券の座席については、以下のようなルールがあります。
要は、指定席やグリーン席を利用する場合で、仮に利用するつもりの列車に「乗り遅れて」も、その日の後続の特急列車であれば「自由席」に限り利用できる形になっています。
自由席については、元々座席を指定していない仕組みのため、当日であればどの列車でも取り扱いに変わりありません。
但し、「最終列車」の場合は、代わりとなる列車がありませんので、乗り遅れても「救済措置」は一切ありません。
特急運賃不要の特例区間
JR北海道の各路線は、通常特急料金が必要な特急列車と、乗車券だけで利用できる普通・快速列車等の両方が運行されています。
しかしながら、需要の関係上普通列車の利用がほぼ無い区間を含む石勝線では、新夕張駅~新得駅間は「特急のみ」の運行となっているため、この区間だけは「特急料金」不要で特急列車が利用できる特例が設けられています。
特急が使えるのはあくまでも新夕張駅~新得駅間に限られ、それ以外の区間を少しでも乗車する場合は、新夕張~新得駅間も含む特急料金が必要となります。
札幌駅~帯広駅間を移動する場合、例えば以下のような乗車方法の場合、特例に含まれる・含まれない状況がそれぞれ生じます。
千歳方面~新夕張間の普通列車も極めて本数が少ないですが、あくまでも「わずかでも運行がある」区間では特例が適用されません。「青春18きっぷ」を利用してご旅行される場合などは、特例に当てはまる条件であるかどうかをよく考慮して移動するのが無難です。
なお、石北本線の一部区間など、道内では他線区でも「極めて本数が少ない」区間がありますが、そちらも「わずかでも運行がある」以上は特例の適用はなく、JR全路線でも短距離の一部区間(宮崎空港線・早岐~佐世保・新青森~青森)を除くと石勝線以外で特例は適用されません。
特急料金以外の「運賃」・「グリーン料金」の詳細については、上記の記事で詳しく解説しています。