「エゾタヌキ」の基礎知識【生態・ホンドタヌキとの違いは?】

生き物

日本国内において最も一般的な野生動物としては、イノシシ・キツネ・外来種のアライグマなど様々な動物を思い浮かべることが出来ますが、歴史的に見た場合最も身近と言える野生動物としては「タヌキ」が挙げられます。タヌキについては、本州以南では「ホンドタヌキ」が、北海道では「エゾタヌキ」が生息し、国内のほとんどの地域で野生の個体が生息しています。

こちらでは、札幌市を含む北海道に生息する「エゾタヌキ」について、その体格・生態・食べ物・一生の流れやホンドタヌキとの違いなどを詳しく解説していきます。

エゾタヌキの「種類・生息地域」

種類ネコ目イヌ科タヌキ属タヌキ種の亜種
生息地域北海道内

エゾタヌキは、ネコ目イヌ科タヌキ属タヌキ種に属する動物で、グループとしては本州以南に生息するホンドタヌキと同じ種であり、タヌキ種の亜種としてそれぞれが存在します。

なお、タヌキという動物は日本でこそごく一般的ですが、世界的に見ると日本とその周辺の極東アジア・ヨーロッパの一部(極東から持ち込まれた結果外来種として繁殖)のみで見られる比較的貴重な動物です。

エゾタヌキの生息地は北海道内の広い範囲ですが、川や沼のある場所・森林などに生息することが多いようです。また、離島では元々生息していない環境であった所に持ち込まれて野生化した場合もありますので、厳密には北海道の全域に人の手が加わる前からいた訳ではありません。

生息数ベースでは、数は決して少ない訳ではありませんが、西日本に住むホンドタヌキほど高い密度では生息していないようです。

エゾタヌキの「体格(大きさ)」

体長(頭胴長)50~70cm程度
尾長(しっぽ)15~20cm程度
体重4~8kg程度
いずれも成長した場合の大きさ

エゾタヌキは、その大きさは50~60cm程度と、北海道に生息する野生動物としては特段大きくも小さくもないと言えるようなサイズで、キタキツネよりはやや小さな動物となっています。

尾(しっぽ)はキタキツネと比べかなり短く、体長がエゾタヌキの半分にも満たないエゾリスと同じくらいであり、ぱっと見た際に、頭から胴体までの長さが占める割合が大きな動物と言えます。

ホンドタヌキとの比較をした場合、体長・足の長さはやや大きめの傾向があるとされますが、例えば動物園などで見た際にエゾタヌキが特別大きく感じられるほどの差はなく、平均すればごくわずか~数センチ程度の差があるかないかといった程度と言えるでしょう。

エゾタヌキの「見た目(色)・身体的特徴」

毛色【基本の色】茶褐色(やや白く・灰色っぽく見える場合あり)
【目・耳・足の周囲】こげ茶色~黒色
【夏毛】足周りなどの黒っぽさが増す
【冬毛】茶色がより強調された色合いに
身体的特徴・タヌキらしい足の短いずんぐりした見た目
・冬毛がかなり発達し、夏毛のと差が大きい(いわゆる「もふもふ」と呼ばれるような状態)
・冬毛はかなり太って見え、夏毛は犬やキツネのように見える場合も
・前肢は5本、後肢は4本
・歯は合計40~44本

エゾタヌキは、わずかに足が長いともされますが、見た目上足が短いタヌキらしい外観はホンドタヌキと大差ありません。毛色は基本は茶褐色ですが、目元など黒くなった場所もあり、こちらもホンドタヌキとの差は目立ちません。

但し、北海道の厳しい寒さに対応するためにエゾタヌキは特に「冬毛」が発達しています(ホンドタヌキも比較的冬毛は豊か)。夏毛と冬毛は毎年入れ替わり、夏毛は短く、冬毛はかなり長いため、時期によって別の動物かと見まがうほどに姿が変わります。

秋に「食いだめ」をして太った状態で冬を迎えるなど時期による体重の差もありますが、見た目の変化は毛の生え変わりによるところも大きく、冬場は温かい毛に包まれぬいぐるみのようになった「もふもふ」の姿を、夏場は色さえ変われば犬かキツネかと思うほどに痩せてシュッとした姿を見せます。

エゾタヌキの「行動・生活・能力」

活動時間帯秋を除き夜行性・昼間は概ね寝ている
生息地川や沼・池など水辺のある地域の森林など(比較的人間の生活空間と近い)
行動範囲・形態・単独またはつがいで行動
・比較的行動範囲は広めとされる
・冬眠はしないが「冬ごもり」を行い巣穴でひっそりと生活する
巣の場所樹洞(樹木に開いた穴)・樹木の根元・岩の隙間・土に開いた穴などを利用し、自分から積極的に造ることはない
特性・能力など・木登りは得意な一方、木から下りることは不得意
・足が短いこともあり俊敏性に欠け、結果として狩りなどは行わない
・死んだふり(擬死)を行う特性あり
・数頭単位で同じ場所に糞をする「ため糞」の特性あり
・「ミャー」などと鳴く場合あり
他種との関係ヒグマに近い場所にいても捕食されないという特徴あり

エゾタヌキは、生態としては夜行性で、脂肪を付けて冬に備えるためにエサ探しに忙しい秋の一時期を除き、昼間に見かけることはまれな存在です。

生息地は高い山というよりは、都市部や農地に比較的近い場所も含め水の資源が豊かな地域を選ぶ傾向があり、川に近い森の中などに生息している場合も多くなっています。巣穴は自然のスペースを利用するなど、一部の野生動物ほどに積極的な巣作りはしないようで、少しのんびりとした性質もあるのかもしれません。

行動のパターンとしては、基本は単独またはつがいで動き回り、群れなどはありません。足が遅いため他の動物のように器用に狩りをすることはありませんが、行動範囲はある程度広い範囲に及ぶともされています。寒い冬も冬眠はしませんが、巣穴で「冬ごもり」をするため外に出ることはほぼありません。

なお、エゾタヌキはやや足が遅いために他の動物からに襲われる危険もありますが、死んだふりをする「擬死」でごまかす能力を持っているほか、北海道で最も巨大な野生動物である「ヒグマ」からはなぜか狩りの対象とされず、襲われないというユニークな特性があります。

エゾタヌキの「食事」

食性雑食性
主な食べるもの木の実(果実)・草本類・昆虫やミミズ、ザリガニなど多くの無脊椎動物・カエル・動物の遺体など幅広く

エゾタヌキの食事は、足が遅いため野生動物の狩りをしないこともあり、その季節・その環境で得られる様々な食べ物を効率よく食べるという特徴があります。

食べる量としては、植物に関係するものがやや多いとされますが、夏場などに昆虫やミミズなどが活発に動く時期はそれらを食べることも多く、植物食の傾向が特に強いとまでは言えません。なお、人間の生活空間の近くに生息している場合、残飯類などを食べることもあります。

冬場については食べ物がなくなるため、ヒグマのように秋になると「食いだめ」を行い皮下脂肪・体重を増やす特徴もあります。冬に生きるエネルギー・栄養は大半をこの食いだめで賄うことから、冬眠をしない(冬ごもりのみ)にも関わらずエサの貯蔵は行いません。

エゾタヌキの「一生」

寿命6~8年程度(飼育下ではより長く約10年)
繁殖のプロセス【繁殖期】冬の終わり~春
【出産時期】春の終わり~初夏頃
【妊娠期間】約2か月程度
【出産数】一度に3~8匹程度
【出産回数】シーズンごとに通常1回
子育て・メスとオスが共同で行う

エゾタヌキの寿命は、野生で長生きした個体で6~8年程度となります。なお、実際には赤ちゃんなどの時に多数が亡くなるため、成獣にならない場合も含めた平均寿命はこれより大幅に短くなります。

繁殖については、春の比較的早い時期から始まり、夏にかけて赤ちゃんが誕生する季節となります。

子育てはメスだけではなく、オスと共同で行う特徴があり、父親タヌキ・母親タヌキ・多数の子タヌキの家族が集まって行動している姿がまれに目撃されることがあります。夏の初め頃までにゆっくりと巣穴から出てきた子タヌキは次第にエサの取り方などを覚えていき、秋から冬にかけて独立の時期を迎えます。

エゾタヌキと人間

エゾタヌキは夜行性ということもあり、目撃する頻度は高くありません。

生息地自体は都市部周辺にも広がっており、札幌市内の公園でも生息している場合があるなど目撃する可能性がゼロとは言えませんが、ホンドタヌキほど人間の生活圏に幅広く食い込んでいるとは言えず、札幌市街地周辺でキタキツネ・エゾリスが頻繁に見かけられるのと比較すると、エゾタヌキはかなり珍しい存在と言えるでしょう。

なお、野生タヌキは様々な病気、とりわけ皮膚の病気であり人間への伝染可能性がある「疥癬」にかかっている個体が見られます。仮に珍しく目の前に現れたとしても、人間慣れすることも含め望ましくありませんので、触ったりむやみに近づいたりすることは控えることが基本です。

エゾタヌキを「見たい」という場合、目撃可能性の低さや様々なリスクを考慮すると野生で見る必要性はなく、動物園で見るのが基本です。道内では札幌市円山動物園・旭川市旭山動物園・おびひろ動物園・北きつね牧場・ノースサファリサッポロ・函館公園で飼育されており、そのふわふわの「冬毛」の姿も含めご覧頂くことが可能です。