「北海道開発局」とは何をする所?基本を知る【位置づけ・他地域との違いとは】

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北海道・札幌という地域・都市を見て行く際に、様々な公共事業などの関係で頻繁に耳にする単語としては「北海道開発局」というものがあります。

日本全国の様々な地域では「開発局」といった名称は余り耳にしないもので、何をする組織なのかよくわからない。という方も少なくありません。

また、「北海道開発局」について「名前くらいは知っている」方については、沖縄と同じで「北海道だけ特別に優遇されている」ようなイメージで捉える人もいらっしゃるかもしれません。

当ページでは、「北海道開発局」とは一体何をしている場所で、どんな位置づけの存在なのか、また他地域とはどういった点で違いが生じるのか(優遇されていると言えるのか)といったテーマについて広く解説していきたいと思います。

北海道開発局は「国土交通省」所管

北海道開発局と呼ばれる組織は、「国土交通省」の地方出先機関にあたる「地方支分部局(ちほうしぶんぶきょく)」に位置づけられるものです。

国土交通省の地方出先機関としては、以下のように地方整備局・北海道開発局・地方運輸局・地方航空局・航空交通管制部がありますが、北海道開発局は、出先機関の中では唯一その地域だけに特化した存在となっています。

地方整備局東北地方整備局・関東地方整備局・北陸地方整備局・中部地方整備局・近畿地方整備局・中国地方整備局・四国地方整備局・九州地方整備局
下部組織として国道事務所、河川事務所等
北海道開発局国土交通省本省の部局である「北海道局」とは異なる
地方運輸局北海道運輸局・東北運輸局・関東運輸局・北陸信越運輸局・中部運輸局・近畿運輸局・中国運輸局・四国運輸局・九州運輸局
地方航空局東京航空局・大阪航空局
航空交通管制部札幌航空交通管制部・東京航空交通管制部・神戸航空交通管制部・福岡航空交通管制部
国土交通省の地方出先機関一覧

前身は「北海道開発庁」

北海道開発局が、なぜ出先機関の中では特別な存在になっているのか。これは、歴史的な経過による部分も大きくなっています。

北海道は明治時代の開拓使以降、その官庁の名称などは変化するものの、他の府県とは異なる形で、国の関与が大きい形でその開発が推し進められてきました。

開拓使1869年(明治2年)7月8日~1882年(明治15年)2月8日
・北海道の開発(開拓)を国が直接担うための機関、実質的には「省」と同じ位置づけ
・当初は存在感がやや薄かったものの、直轄統治や大規模な財政出動を伴う「開拓使十年計画」によって大きな役割を果たす
函館県
札幌県
根室県
北海道事業管理局
三県一局時代
1882年(明治15年)2月8日~1886年(明治19年)1月26日
・函館県(はこだてけん)、札幌県(さっぽろけん)、根室県(ねむろけん)の3つの地方行政単位に加え、国の期間である北海道事業管理局(農商務省の一部局)により開発(開拓)が推進
・各県の規模の差、各県と事業管理局の調整の難航などにより短期間で終わる
北海道庁1886年(明治19年)1月26日~1947年(昭和22年)5月3日
・内務省直轄地域の北海道の地方行政官庁として設置
・他の府県とは位置づけが異なり、地方自治を行う権限は小さい
・他の府県と同じ位置づけのものとして「北海道地方費」が別途設置
北海道開発庁1950年(昭和25年)6月1日~2001年(平成13年)1月6日
・大臣や事務次官を有する「省庁」
・一方で、省庁独自の施策立案機能などは事実上なく、現在の北海道開発局に準ずる業務内容が大半
北海道開発局2001年(平成13年)1月6日~
・北海道開発庁内の地方部局である北海道開発局を、開発庁廃止に伴い国土交通省の地方支分部局に再編する形で発足
・開発の計画など企画立案を行う部門は「北海道局」が別途国土交通省の内部部局(東京)として設置
北海道開発を担う国・地方行政機関の変遷

戦後は、1950年(昭和25年)に北海道開発について規定した「北海道開発法」が制定されたほか、北海道開発を行う機関としては長らく北海道開発庁が存在し、約半世紀の歴史を築いてきました。開発庁は2001年に中央省庁が大規模に再編される際に廃止となり、新設された国土交通省の一部門として「北海道開発局」と「北海道局」と呼ばれる2つの組織が誕生しました。

2001年に発足し現在まで運営されている北海道開発局は、かつての北海道開発庁の業務内容の大半を受け継ぐものであり、再編後に業務内容に劇的な変化が生じた訳ではありません。

なお、国土交通省内には東京にある内部部局として似たような名称の「北海道局」がありますが、こちらは現業機関ではなく「北海道開発」全体の企画立案などを担う組織で、規模は比較的小さなものとなっています。

何をしている?【基本的に「公共事業」を実施するための機関】

国土交通省の地方出先機関であり、かつての北海道開発庁を引き継ぐ「北海道開発局」。その業務内容は一体どのようなものなのでしょうか?

北海道開発局が実施する事業は、北海道内で行われる「河川・道路・港湾・空港・漁港・農業」また「防災・情報通信・観光・アイヌ施策」等に関する幅広い「国直轄事業(公共事業)」です。
また、各公共事業について地方自治体が国の予算補助に基づき主導的に行う「補助事業」にも予算面などで関わっています。
この他には、道内で国が関わる都市計画行政・住宅行政・建設産業行政・官庁営繕といった業務も所管しています。

すなわち、北海道内で実施される各種土木工事、建設工事などで「国」が関係しているものは、原則として全て「北海道開発局」の管轄・関与の下に行われています。

一般的な「地方整備局」と実施している内容はかなりの部分で重複していますが、大きな違いとしては北海道以外では農林水産省の所管となる農業関連の土木工事(公共事業)、一部は厚生労働省・環境省の所管事業なども含み全て北海道開発局の所管となっており、特に「地方農政局」の役割を一部代替しているなど、担当する業務の幅がやや広いことが特徴です。

なお、北海道開発局の行う事業は、北海道全体の「開発方針」を示した「北海道総合開発計画」に基づくものです。
北海道総合開発計画は、北海道開発法に基づき国土交通省内にある別の部局「北海道局(内部部局として東京に設置)」が主導となって、審議会などによる調整(政治的なものも含む)などを経て決定されるもので、「北海道開発局」が自ら全てを企画立案するものではありません。

北海道開発局は、北海道総合開発計画に基づく施策・事業を北海道局の指導の下「具体的に進めていく」ための組織であり、その意味では「現業機関」的な意味合いを強く持つ存在と言えるでしょう。

結局「何が違う・何が特別」なの?

予算一括計上

北海道に関する国が関与する公共事業(国土交通省・農林水産省など)を、省庁の枠を超えて国土交通省北海道開発局の枠組みで「一括計上」しています。
これにより、北海道開発計画に基づく各種事業がより効率的に推進・実施しやすくなる(省庁間の縦割りなどが減り、利害調整・全体的な把握が容易になる)とされています。

「直轄」の区分

各種インフラについて見た場合、北海道の場合「直轄」の幅がやや広く、結果として直轄「事業(予算)」も少し多くなるという違いがあり、ごくわずかな優遇措置と言えます。一例としては「国道」と呼ばれるものは道内では全てが国の管理にありますが、他の都府県では「補助国道」とされる都道府県管理のものがあるなど、一定の違いが見られます。

国庫負担率の優遇

各種事業を実施する際には、国直轄事業の他にも地域自治体が国の補助を受けて行う「補助事業」がありますが、こちらの「補助率(国庫負担率)」が北海道では一部高く設定されており、こちらもごくわずかな優遇措置と言えます。

北海道開発局が担う事業については、上記のような違いがあり、直轄区分・国庫負担率の違いなどは「北海道特例」と呼ばれるなど、厳しい地域環境を持つ北海道に対する「政策的なアシスト」としての役割を持っています。

但し、後述するように予算ベースで全体を見た場合、北海道が実質的に「優遇されている」状況とは言えず、各種特例の存在にはある程度のメリットはあったとしても、それらが大きな変化をもたらしている訳ではありません。

予算規模は?

2021年(令和3年)分の北海道開発予算は、総額で7758億3800万円、うち公共事業費本体にあたる金額は7618億800万円となっています。

これらの金額は、一般会計予算と補正予算の合計金額となっており、近年は当初予算ベースでは6000億円台程度の場合が多くなっています。

この金額は、一見すると「多い」ようにも見えるかもしれませんが、後ほど解説するように、北海道に対して国(政府)から支出されている金額自体は、全国的に見て特に高いということはありません。

過去の北海道開発予算を見て行くと、事業費ベースでは平成の前半には総額が1兆5,000億円~2兆円程度となる年が多く、現在の2倍以上の公共事業費がごく一般的でした。

開発予算は、いわゆる「小泉構造改革」の時代に入り急激な減少局面に入り、2000年以降の約10年間で、予算額は半分程度まで減りました。民主党政権下でも公共事業費の削減が進み、2012年(平成24年)に開発予算は底を迎え、その後は補正予算で組まれる額が増えるなどしたことや、国土強靭化が叫ばれるようになったこともあり、少なくとも「過去最低」を更新することはなく、横ばいまたは微増程度で推移しています。

予算額の話となると「無駄遣い」であるとか「コストカット」が強く主張されるなど、「ピリピリ」した雰囲気になりがちですが、はっきり言えることは過去と比較した場合「既に北海道開発予算はずいぶんと減らされている」ということです。

二重行政との批判がある?優遇されているって本当?

北海道開発局については、その特殊な名称もあり、また「北海道開発予算」という位置づけで予算が計上されることもあり、時には批判の対象になってきました。

よくある批判としては、北海道庁が既に存在するのに、開発局が別に事業を行うのは「二重行政」でありけしからん。という主張のものや、沖縄と同じように地域名が付く予算が計上されていることに対し「特別扱い・優遇されすぎ」であるという、地域の位置づけそのものも含めた批判的主張が見られます。

このような批判については、批判する側も、その批判を受ける側も、事実・現状をしっかりと見た上で議論をする必要があります。

二重行政批判は「開発局」固有の問題ではない

まず、「二重行政」との批判については、仮に北海道開発局が二重行政なのであれば、各地の地方整備局もまた二重行政との批判を受ける必要が生じてしまいます。

全体を見た場合、「北海道開発局だから」とりわけ二重行政の程度が大きい。とか「北海道開発局だから」特段の問題がある。と言われるほどの実態はありません。

先述したように、開発局は「北海道だけ特別」な業務をやっているという訳ではなく、所管業務は地方整備局で取り扱う内容と、それにプラスして北海道以外では農林水産省が所管する農業土木関連の業務なども所管しているものです。他省が担うはずの業務も所管する以上、むしろ省庁の縦割りが一つにまとめられてすっきりしている側面もあると言えるでしょう。

地方整備局の廃止論は、現在以上に「公務員・官僚」に対するバッシングが激しかった2008~2009年頃などに活発化しましたが、近年は鳴りを潜め、余り聞かれなくなりました。

少なくとも、北海道開発局を二重行政の文脈で批判するのであれば、開発局にターゲットを絞るのではなく、国の出先機関全体を巡る行政改革の文脈で議論がなされる必要があるでしょうし、その際には都道府県・政令指定都市などの存在を含めた幅広い議論が必要となるでしょう。

また、国直轄の公共事業と北海道が実施する公共事業は、実際の所それほど重複が大きいとも言えません。その点では「そもそも二重行政批判に大きな説得力があるのか?」という逆方向からの議論も成り立つでしょう。

全国で北海道が予算面で優遇のデータなし

特別扱い・優遇されているという批判については、制度的な非常に細かな「細部」を見て行けば、一部で国庫負担率の増額など、北海道がその「土地条件の厳しさ」などを考慮されて優遇されている点は「ゼロとは言えない」ことは確かですが、沖縄と同様に、「実際の予算額」で見た場合、北海道は全国の中で特段優遇されているということは「一切」ありません。

明確なデータとして、各都道府県ごとの「地方交付税+国庫支出金」の額と、人口1人あたりで換算した場合の額を一覧で見ていきましょう。

都道府県地方交付税総額国庫支出金総額合計人口1人あたりの国支出
(地方交付税+国庫支出金のみ)
1位 岩手県2898.3億円1987.1億円4885.4億円40.4万円
2位 島根県1832.1億円692.4億円2524.5億円37.6万円
3位 福島県2731.7億円3935.5億円6667.2億円36.4万円
4位 高知県1719.4億円714.0億円2433.4億円35.2万円
5位 鳥取県1374.4億円533.1億円1907.5億円34.5万円
6位 沖縄県2093.3億円2142.2億円4235.5億円28.9万円
7位 秋田県1973.3億円774.4億円2747.7億円28.6万円
8位 徳島県1491.9億円536.0億円2027.8億円28.2万円
9位 青森県2229.6億円1092.5億円3322.1億円26.8万円
10位 鹿児島県2705.6億円1541.3億円4246.8億円26.7万円
11位 福井県1304.6億円742.5億円2047.1億円26.7万円
12位 和歌山県1724.7億円733.1億円2457.8億円26.6万円
13位 宮崎県1850.6億円908.7億円2759.4億円25.8万円
14位 長崎県2223.7億円1152.5億円3376.2億円25.7万円
15位 佐賀県1465.4億円611.7億円2077.1億円25.6万円
16位 熊本県2173.4億円2036.5億円4209.9億円24.2万円
17位 山形県1802.2億円705.3億円2507.5億円23.5万円
18位 大分県1725.3億円875.9億円2601.2億円23.2万円
19位 山梨県1280.6億円546.8億円1827.5億円22.6万円
20位 宮城県2021.0億円2901.3億円4922.3億円21.4万円
21位 北海道6256.5億円3835.1億円10091.6億円19.2万円
22位 愛媛県1679.1億円799.5億円2478.7億円18.6万円
23位 山口県1696.2億円794.8億円2491.0億円18.6万円
24位 富山県1303.1億円596.4億円1899.5億円18.4万円
25位 新潟県2511.8億円1427億円3938.8億円17.9万円
26位 石川県1271.3億円697.2億円1968.5億円17.4万円
27位 奈良県1567.3億円606.4億円2173.8億円16.4万円
28位 香川県1098.4億円448.8億円1547.2億円16.3万円
29位 長野県2013.5億円1007.6億円3021.1億円14.8万円
30位 岐阜県1737.0億円866.6億円2603.6億円13.2万円
31位 三重県1392.7億円807.0億円2199.7億円12.4万円
32位 滋賀県1157.5億円597.0億円1754.5億円12.4万円
33位 岡山県1600.8億円647.8億円2248.6億円11.9万円
34位 茨城県1933.8億円1311.9億円3245.6億円11.3万円
35位 栃木県1219.5億円858.3億円2077.8億円10.8万円
36位 群馬県1189.9億円876.2億円2066.1億円10.7万円
37位 京都府1690.8億円760.2億円2450.9億円9.5万円
38位 広島県1715.6億円943.4億円2659.1億円9.5万円
39位 兵庫県3003.2億円1713.1億円4716.3億円8.6万円
40位 福岡県2573.3億円1859.8億円4433.1億円8.6万円
41位 静岡県1456.3億円1161.2億円2617.5億円7.2万円
42位 千葉県1763.1億円1696.1億円3459.2億円5.5万円
43位 大阪府2447.7億円2208.3億円4656.0億円5.3万円
44位 埼玉県2045.5億円1625.0億円3670.5億円5.0万円
45位 愛知県718.6億円1951.8億円2670.4億円3.5万円
46位 東京都0円3896.8億円3896.8億円2.8万円
47位 神奈川県928.9億円1282.1億円2211.0億円2.4万円
※地方交付税及び国庫支出金のデータはe-Statの地方財政状況調査個別データから(2017年分)
※人口データは2020年の国勢調査に基づくデータ
※人口1人あたりのデータは、上記の利用統計の年が異なるため参考値

もし、北海道に投じられている公共事業費が、同じような地方の自治体と比べて何倍もあれば、それは「優遇」かもしれませんが、実際にはそんなことはなく、上記の表の中では、北海道は21番目となっており、むしろ全国の平均的なレベルの「国からの支出」しか受けていないことが分かります。

確かに地方交付税+国庫支出金の合計は、全国で唯一「1兆円」を超えていますが、これは北海道の人口が比較的多い(500万人超)ことに由来します。仮に島根県の人口が北海道と同じであったとすれば、同じ予算規模の場合2兆円程度の金額になりますので、北海道は「人口1人あたり」で見た場合の地方交付税+国庫支出金は特段多いとは言えないのです。

まとめ

北海道開発局は、国土交通省の地方出先機関にあたる「地方支分部局(ちほうしぶんぶきょく)」の一部局です。

歴史的には、現在の開発局は戦後約半世紀に渡り北海道開発を担ってきた「北海道開発庁」内にあった北海道開発局の後継にあたり、実務的にはかつてと大きな差はない事業内容となっています。

開発局は北海道内における国が関わる各種公共事業の実施を担う「実務的」な組織で、北海道開発法に基づく「北海道総合開発計画」に沿って、それらの策定などを行う「北海道局」の指導・監督の下運営されています。

他地域との差としては、国交省の枠組みを超えた事業を行う「予算一括計上」直轄区分の拡大や国庫負担の増額といった「北海道特例」と呼ばれるわずかな予算・政策的優遇が違いとなっています。

現在の予算額は総額で7,000億円台と、過去1.5~2兆円あった時代との比較では大幅に減少しており、道内の公共事業は一時期ほどの規模感を持って行われている訳ではありません。

開発局は時に「二重行政」や「優遇」との批判を受ける場合があります。
しかしながら、二重行政に関する問題は「北海道開発局」に固有の要因がある問題ではなく、国の出先機関全体を巡る議論とする必要があるほか、地方交付税+国庫支出金で見た国の支出は、北海道は全国でも特段上位ではないなど、北海道特例がある中でも「優遇」の具体的なデータは見当たらず、必ずしも正当な批判とは言い切れない側面があります。